50代の醍醐味
”50代になったら、自分のためだけに生きるのではなく、周りのため、社会のために「しごと」をしてみよう。それができるのが50代の醍醐味だから”
という布作家の早川ユミさんの言葉を目にして『そうそう!それそれ!私もそう思ってる!!』と何度も膝を打ったのは、今年の冬が終わる頃でした。
40歳を過ぎたころから、漠然と描いていた未来予想図は、感覚として捉えることはできても「言葉」として、うまく整理できないままで、無理にまとめて、文字にでもしようものなら、何度書き直しても、まるで昔、齧ってしまったアメリカ生まれの少々胡散臭い心理学の講師が書いたブログのような、摩訶不思議で、捉えどころのない、根拠のない絵空事になってしまうのです。情けないことに結局私は何年も、「言葉」として整理できないまま、今年の冬まで過ごしてしまったということです。
冬が終わる気配の福岡の、小さな書店で、散らばった頭の中の言葉をすべて、並べてくれた「文字」に出会うまでは。
昨年、福岡大学で、東日本大震災をきっかけに日本に入ってきた「MHF」というプログラムを学びました。
教えてくださったのは臨床心理士であり、福岡大学人文学部准教授であり、MHFマスタートレーナーの長江信和先生でした。
講座の中では、メンタルの不調を専門家に相談する方は3割程度、誰にも悩みを打ち明けない方や、家族や友人にだけ打ち明ける方が大半を占めているという現実を再確認しました。
更に症状理解や傾聴スキル、セルフケア、専門家への紹介方法について学びました。
特に『傾聴』については、非言語的な技法を使って、開かれた姿勢で、そばにいるだけ、見守るだけ、ただうなづくだけで、話し手が自分の話したいことに集中し、自分自身で心の現在地を確認でき、どうしたいのか考えることができるスキルをもう一度、学び直すことができました。
「歪みのない鏡で相手を照らす」とは、どういう意味でどういうことなのだろうと49歳の私が考えた30時間でした。そして、もうひとつ遅ればせながら「ペイフォアード」という言葉の意味を知ったのも、この時でした。
あれから約1年後の今年4月、熊本・大分で大きな地震がありました。福岡に住む私にとって、熊本も由布院も、何度も訪れ、たくさんの思い出がある場所です。熊本にいる友人、熊本に家族のいる知人、受講生、周りにはたくさんの、悲しみや不安を抱えた方が、いました。
夏が始まる6月、東京に、このプログラムを「教える人」になるための勉強に行きました。
「今行かなきゃ一生後悔する」と思ったのは「ペイフォアード」という生き方を知ったからかもしれません。
「一生後悔する」と思うことを、やらないと、それはもう、とんでもなく後悔するに違いないと50歳の私は思いながら、「へぇ、そんなこと、まだあるんだぁ」という驚きとおかしさと、面白さで、飛行機の切符を手配し、浜松町からタクシーで、早稲田の美しい会場まで毎回ギリギリセーフで駆け込みました。
MHFを教えてくださった先生は「ペイフォアード」の意味を、「恩送り」と日本語で教えてくださいました。
先生に受けた「ご恩」を私は別の人に送ることにします。
秋が始まる来月、「MHF熊本・大分被災地支援講座」にトレーナーとして参加します。
”自分のためだけに生きるのではなく、周りのため、社会のために「しごと」をしてみよう”
それができる50代にせっかくなったのだから。